回路図
| オリジナル回路図 (PDFファイル) まずこのPDFファイルがオリジナルの回路です。 高速オペアンプを2つ使用してRGB信号から色差信号への変換を行います。 今回、私が作ったのはこのバージョンです。 ただし結線方法や電源部分については私のテキトーな設計で済ましています。 便利さを考えるとD端子の方が便利ですが、画質面で優位性はないので、 通常のピンジャック(RCAのレセプタクル)によるコンポーネント接続もモマンタイです。 その場合、D端子もD端子に繋ぐスイッチも不要となります。 回路そのものについてですが、発熱はほとんどありませんので、 割とアバウトにケースの選択が出来ます。 またオペアンプは一つ省略した方が、難易度が かな〜り下がるので、 参考としてオペアンプ1個バージョンの回路を書き直してみました。 人柱になれる人はこちらで作っみても良いでしょう。 この回路の補足(インピーダンス抵抗)についてはこちら (PNG画像) なお実体配線図は作っていませんので、各自で配線を考えてください。 おおまかな参考として画像を掲載します。 ■表 左側のはVGAコネクタからです。 赤緑青はそれぞれR,G,Bで、白はHSync、紫はVSync、 灰色がRGBの個別GND、黒はGNDです。 右側は上の赤黒の線はACアダプタからの電力です。 中央の5本はD端子の制御用で茶、紫、橙が5V、黄、白が2.2VでD端子に行きます。 残りの7本はD端子の映像用で黒はD端子のシールド、灰色はY,Pb,Prの各GND、 緑青赤がY,Pb,Prになります。 初段オペアンプには上からR,G,Bで入力され、初段の出力は次段の入力にジャンパ線などを介して 接続され、次段の出力は上からY,Pb,Prの順で出力されています。 ■表2 次段オペアンプの変換基板の裏側。ピンボケで申し訳ない。 ■裏 裏側でも一箇所ほどジャンプしています。汚くて申し訳ない。 ■補足 この部分の抵抗はジャンパ代わりに余った抵抗を使ったものなので本来は不要です。 ただし私の製作例ではパスコン付け忘れなどのミスでパターンがウニョったため、 本当の意味で大まかな参考にしかなりません(正直、作り直したいぐらい)。 つきましては綺麗な実体配線図を作ってくれた人はアプ板までお願いしまつ。 ではザッと回路の説明をします。 実体配線を描けるレベルの人には釈迦に説法ですが、予備軍の方々のレベルアップも狙いとしてます。 なお、ここで説明されていない事項については後述のメモに説明されている場合もあります。 ・R1,R2,R3 インピーダンス抵抗です。 75Ωというのはビデオ系の信号で一般的に使用されている抵抗値のことです。 送り75Ω 受け75Ω接地。 つまり75Ω抵抗2つで分圧していることになります。 従って入力時には電圧は半分になって利用されることになります。 送り出すときに電圧2倍にする理由はお判りいただけたでしょうか。 ・C1,C2,C3 カップリングコンデンサです。 入力信号の直流成分を取り除きます。 RGB信号は常に振幅(同期信号除く)しているため、本来は直流成分が存在しないはずですが、 信号に変な直流分が混じるとあからさまに色がおかしくなります。 そのため直流分を取り除く必要があります。 オリジナルでは1uFとなってますが、なぜその数値なのかは知りません。 私は1uFを入手していなかったため、0.1uFのクロレッツみたいなコンデンサ(マイラ)を使いました。 この0.1uFは定番のような数値なので、気にせず使いました。 ただしOSコンなどは使用しないようにしましょう。 ・R4,R5,R6 オペアンプのバイアス抵抗です。 オペアンプの入力には必ず直流電圧を与えるものが接続されていなければなりません。 とは言え全くの受け売りのため何故33Kなのか知りません。 多分、値が小さいとインピーダンス変動が大きくなるからなのでしょう。 ・LT1399CS この製作のキモである、リニアテクノロジー社の高速広帯域電流帰還オペアンプです。 オペアンプとは増幅、合成などを行うデバイスです。 普通のDIPの半分のピッチ1.27mmの小さいICのため変換基板が必要となります。 このアンプの存在がトラスコ道の間口を広げてくれました。 オリジナルでは初段は単なるバッファとして使用されています。 次段で接続されている各抵抗で色の合成比率、倍率などが決まります。 ・ICL7660 マキシム社のボルテージコンバータです。 5Vから-5Vを生成します。また使い方によってはパルスを生成することも可能です。 LT1399CSは単電源では使用できないため、負電圧を生成する必要があるため使用します。 回路構成はデータシートの基本をそのまま流用しています。 10uFのコンデンサにはOSコンを使用しました。極性には十分注意する必要があります。 なお各社から7660型番の互換製品があるようですので、購入時はお店の人に任せてOKです。 ・74AC86 汎用ロジックIC(4ゲートEx-OR)です。 AVマルチの記事でもお馴染みのデバイスです。 Ex-OR(XOR)とは手旗信号で片手だけ上げている状態が正解(Hi)となる論理(排他的論理和)のことです。 両手を上げたり、上げていなかったりすると不正解(Low)となります。 1pin,2pinにそれぞれH-Sync(水平同期信号)とV-Sync(垂直同期信号)を入力、 同期信号はパルス(スイッチをON,OFFしているだけ)の信号ですので、HとVの どちらか片方がONの状態をHiとして出力します。 ここで出力された信号をC-Sync(複合同期信号)として取り扱いますが、 この状態では正論理(通常は負論理で使用する)のため通常は反転させてあげる必要があります。 今回の回路ではオペアンプの-端子に入力して(+) *(−)=(−)という処置をしています。 ただ1ゲートしか使っていないのでもったいないお化けが出てきそうです。 ・ICの近辺にくっついてる0.1uFのコンデンサ これはパスコンと呼ばれるもので、ICの電流消費が時々変化しているため、その補償のために 取り付けているものです。 [ICが電流食う->なんか天気が怪しくなる->パスコンに吐き出させよう] ICでは定番のノイズ対策です。ファミコンのローノイズ改造では効果は最強だったとか。 通常、積層セラミックコンデンサがよく使われます。 色んなものがありますが体感できるほど違いが出るのかは知りません。 ・電源周りの回路 スイッチング電源のノイズ対策です。 基本はコイルとコンデンサでローパスフィルタを構成しています。 また全体としてはノーマルモードノイズとコモンモードノイズの両方を考えて、どっかから構成をパクってます。 したがって細かいことは私には説明できません(´∀`) 気になる人は宮崎技研や村田製作所などを参照してください。 ・D端子直前の抵抗など D端子の機能をフルに利用するため儲けてある回路です。 省略しても問題なく動作はします(受像側任せになりますが)。 R30,R31の分圧により約2.2Vの電圧を生成しています。 ・その他 74AC86のH-Sync,V-Sync入力の直前にある33KΩの抵抗は静電気対策の意味合いがあります。 またICの不要ピンを処理するのは、オペアンプに於いてはノイズの低減、 ロジックICにおいては誤動作の防止の意味合いがあります。 |
材料
| まずはオリジナルの2オペアンプ回路での必要材料を列挙します。 アキバに行ける人のため、入手場所なども参考として記します。 基本的に千石や秋月で買えるものはそちらで買いましょう(安いから)。 それとラジデパの瀬田無線は店主の態度が異様に悪いので、精神衛生のため利用は避けましょう。 |
製作工程
| 以下はパネル配線用の参考手順です。 あくまで参考なので、文句を言わないように。 1.実体配線を考える 以下のことを留意し、配線ラインを考える。 ・電源、RGB、色差の3つのGNDは回路内で接続されている ・GNDは極力ループさせない ・パスコンは極力ICの付近に配置 ・コイルを複数使用する場合は隣接するコイルと向きを変える 2.ICを空中配線 パスコンの取り付け、不要ピンの処理などは事前に空中配線しておいた方が、 レイアウト的に綺麗になります。 また不要ピンは事前に切除した方が楽です。 3.変換基板にICとパスコンを取り付ける 4.部品を仮組みする 背の低いものから配置する。 ジャンパ線->抵抗->IC->変換基板のように 背の高いコンデンサ、コイル、スイッチなどは後回しの方が楽です。 また抵抗などは足を曲げる専用定規みたいなのがあると綺麗に揃うようです(私は未所持)。 5.抵抗、変換基板などの接合 極力抵抗の足などをそのまま利用する方が綺麗に行くようです。 それ以外の部分はメッキ線で。メッキ線はペンチなどで強く引っ張ると真っ直ぐになります。 配線がクロスする接合点(⊥みたいなの)は下手に曲げるよりも小さいニッパなどで、 ちゃっきりに切ると見栄えが綺麗になるようです。 コテの当てすぎは厳禁ですが、苦戦している内に半田に張りが無くなったら、吸い取るか フラックスで喝入れしましょう。 付け終わったらテスターで導通チェックを行います。 6.コイル、コンデンサの接合 コンデンサは極性に注意。 万力やメリケンのロボットみたいな固定用の器具などがあると半田付けも楽です。 7.電源,GNDラインの配線 メッキ線をフル活用で。 極力太い線材を使うのが理想です。しかし綺麗に線を這わすのが難しくなる諸刃の剣。 終わったら導通チェック。 きちんと付いてるように見えてもGNDが浮いていることがあります。 その場合は画面が流れたりノイズが出たりします。 8.各種コネクタ、スイッチの結線。 コネクタに予備半田を打ち、被覆線を付けます。 色で分けた方がチェックと配線が楽になります。 VGAコネクタは簡単ですが、基板用D端子だと取り付けがかなりキツいので、 0.3mmほどのジュンフロン線の方が良いかも知れません。 付け終わったら基板の接合点に合わせ、コネクタからの線が綺麗にまとまるぐらいの 丁度良い長さのところでカット。 それから基板に被覆線を半田付け D端子 ピンアサイン 必要となるのはY,Pb,Pr,各ライン(ID),各GND 結線の際には先に14pin(プラグ挿入検出)と12pin(プラグ挿入検出GND)をショートさせておきます。 VGA ピンアサイン 必要となるのはRGB,H,Vと各GNDです。 GNDは別々にとっても、コネクタで全部結線し基板上の一点で結線しても、 画質としては大して変わりがないようです。 9.導通チェック 最後は念入りにチェック。 10.動作テスト 無事に動けば完了。 動かなかったら怪しい場所をチェックして再度半田付けなどを実施する。 と、簡単に書いてますが、非常に苦労してたりします。 動かない場合の対処方法についてはおいおい掲載していきたいと思います。 製作した人はどんどんアプ板にでもご報告ください。 お待ちしております(´∀`) |
参考メモ
| さらなる理解の一助としてください。 ・はじめに RGB各信号レベル:0.7Vp-p(75Ω終端) Yのレベル:1Vp-p(75Ω終端) 映像信号 約0.7 + 同期信号 約0.3 Pr,Pbのレベル:0.7Vp-p(75Ω終端) 同期信号 TTLレベル パルス 1.オペアンプについて ・出力端子から-端子に接続された抵抗を負帰還抵抗という ・+端子に入力された信号の位相は増幅後も変わらない ・-端子に入力された信号の位相は増幅後に反転する ・帰還された状態では+端子と-端子の電位差はほぼ等しくなる(バーチャルショート) ・信号の合成はバーチャルショートを利用している(ミキサーの原理はこれ) ・入力信号の分圧が可能なのは+端子に接続された場合のみ ・信号の加算、減算などが行える たとえば1R-0.454152G-0.045847BのときはR信号からG,B信号を減算するとイメージできる ・入力信号の増幅率は信号別に計算する必要がある 2.HDTVカラーマトリクス(YPbPr)の導出 ◎輝度(Y) = 0.2126R+0.7152G+0.0722B @ゲイン2倍=0.4252R+1.4304G+0.1444B の出力 よって輝度Yの導出は加算回路 B-Y=1B-(0.2126R+0.7152G+0.0722B) =0.9278B-0.2126R-0.7152G ----(1) (2)R-Y=1R-(0.2126R+0.7152G+0.0722B) =0.7874R-0.7152G-0.0722B ----(2) ◎赤色差(Pr) = 0.6350*(R-Y) (1)に伝送用圧縮率0.6350倍を乗じて =0.499999R-0.454152G-0.045847B @ゲイン2倍=1R-0.454152G-0.045847B の出力 よって色差Prの導出はRへの減算回路 ◎青色差(Pb) = 0.5389*(B-Y) (2)に伝送用圧縮率0.5389倍を乗じて = 0.49999142B-0.11457014R-0.38542128G ゲイン2倍 =1B-0.22914028R-0.7708456G の出力 よって色差Pbの導出はBへの減算回路 3.入力インピーダンス抵抗の算出(75Ω) ◎入力抵抗の計算 オリジナルは初段のオペアンプをバッファとして使用しており、面倒な計算は不要。 オペアンプが一つの場合は以下のようになる。 アンプの-入力はGND (=0Ω) +入力は開放(=∞Ω)として計算 (1)R入力 R1 75[ohm]=R1//R4//R12//(R15+R16) 1/(1/x1)+(1/1000)+(1/1300)+(1/300+300))=75 x1≒101 (2)G入力 R2 75[ohm]=R2//R5//R13//R17 1/((1/x2)+(1/300)+(1/390)+(1/330))=75 x2≒227 (3)B入力 R3 75[ohm]=R3//R6//(R10+R11)//R18 1/((1/x3)+(1/3000)+(1/(300+300))+(1/3300))=75 x3≒90.7 (//は並列接続 +は直列接続を表す) 4.D端子の識別電圧 ┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━┓ ┃識別電圧 ┃ 5V ┃ 2.2V ┃ 0V ┃ ┣━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━┫ ┃識別信号1(走査線数) ┃ 1125 ┃ 750 ┃ 525 ┃ ┃識別信号2(走査方式) ┃ プログレ ┃ − ┃インタレース┃ ┃識別信号3(アスペクト比)┃ 16:9 ┃ 4:3レターボックス┃ 4:3 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━┻━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━┛ 出力抵抗は10kΩ、入力抵抗は100kΩ以上 5.その他 ◎ウレタン被覆線について 今回の製作では錫メッキ線を買わずに、0.5mmのウレタン線を使用しましたが失敗でした。 20Wのコテぐらいじゃなかなか被覆が溶けません。 おかげでデバッグ・・じゃないチェックに苦労して苦労して(略 とりあえず発見した技で有効だったのは、吸い取り線にある程度半田を吸わせてから ひたすらコテでしごく。それでも無被覆の方が楽ですが、覚えておいて損はないと思います。 ◎クランプについて ビデオ信号の黒レベルは0Vではありません(ほんの少し上)。 クランプとは黒レベルを固定する(信号の下限を決める)ために一定の直流電圧を信号に付加すること。 AC結合の場合、コンデンサで直流成分が取り除かれるため画面切り替え時の信号レベルが安定しない。 そこでLM1881NのBurst/Back Porch出力などを利用している回路をよく見ます。 クランプする場合は、クランプのコンデンサの後は高インピーダンスの回路(アンプの+入力に 接続している)ことが必要らしい。 3値Syncを考えない今回の製作では使用してません。 ◎ELMさんとこの回路について 電子工作界のラオウのようなELMさんですが、剛すぎる(不親切とも言う)ため、半端な人間には理解が困難です。 そこで、でんきモナー氏が理解の一助となるよう作成してくださったPDFを掲載します(ホント親切な人や)。 ELMのRGB to YCrCb 回路図の解説 (PDFファイル) 出典元:ELM - コンポーネント→RGB コンバータの「参考回路4(逆変換)」 ※このPDF文書に掲載されている回路はELM(Electronic Lives Manufacturing)に著作権が帰属します。 この回路に対する質問などは当方ではお受けいたしません。 以下、でんきモナー氏のコメント。 >ELMさんとこの同期信号の混合方法は少し変わってる。 >同期信号がLOWレベルになった時だけトランジスタがオンして >5[V]×200/1800 = 0.556[V] が出力される。 >この時RGB信号はブランキング期間なので出力には出てこない。 >(本当は0.6[V]欲しいんだが同期信号レベルは画質に影響しない) > >同期信号がLOWレベルでない期間はトランジスタがオフしているので >ここの抵抗(1.8k)は増幅度には関係なくなる。 >その時ICは200Ωで帰還がかかっているだけで、ゲインは1になる。 >トランジスタがオフする時の切れ具合がやや不安なんだが、 >まあ参考回路ということみたいだから。 |